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たくいた版『今昔物語』 加拿大部 ~西部の男と軍服の女~ [無情剣客多情剣]

 「野郎ども、愛しあってるかいっ!?」




 愛のキューピット・新選組副長助勤たくいたのブログへようこそ。

 前回、どぅいちゃんの妹・どぅいヒンと新選組隊士おがんを引きあわせようと画策するも、どぅいヒンの悪行を報告すると、

 「そんな娘を紹介しようとしてたんや……」

 の一言を残して、1年間、おがんと音信不通になり、幸か不幸か愛のキューピットになりそこねてしまった過去を持つ。

 そんな邪心丸出しの心を、清い心に変えるには、やはり「懺悔」しかありません。

 神よ! 南無八幡大菩薩よ! 我はここに懺悔します。どうか、我を導き給え。



 今は昔。

 たくいたという青年がカナダのトロントに住んでいた。

 そんなトロントのホームステイ先に、一人の日本男児がやってきた。

 横浜出身のその青年は、デビット伊東に似ていたので、”デビちゃん”と呼ばれた。

 ハーレイダビットソンが好きらしく、Zippoのライターもハーレイ、ベルトのバックルもハーレイ、みたいな感じで、身の回りの小物類は、みな「ハーレイ」だった。

 「ハーレイ好きなんや?」

 「うん。ハーレイかっこいいよね。でも、バイク持ってないだよね」

 「ハーレイ高いしね」

 「うん。バイクの免許も持ってないんだけどね」

 「あはははは。 ハーレイのZippoもあるんや?」

 「かっこいいだろ? Zippoって、音が違うんだよね。でも、俺、タバコ吸わないんだよね」

 そんなハーレー好きなデビちゃんは、スキーに行ったとき、スキーウェアなんて”ナンパ”なものは着用せず、皮のハーレーのライダースジャケットを着て、スキーしてはりました。カッコよすぎです。

 あるとき、『クイック&デッド』を観てしまったデビちゃん。すっかり、この映画の主人公のシャロン・ストーンのカッコよさに魅了されてしまい、翌日、シャロン・ストーンが着てたみたいなコートを購入。



 
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 この日から、夏でもこのコート着用です。トロントは、カナダにあるとはいえ、夏にコートは暑いやろ……。

 そんなデビちゃんにあることを尋ねてみた。

 「デビちゃん、彼女はいるの?」

 「いないよ」
 
 「好きな人はいるの?」

 「いないよ」

 「ふ~ん」



 デビちゃんが語学学校に通いだした頃、他の語学学校からやってきた女がいた。

 当時19歳くらい。左胸に3つの勲章が光るグレーの軍服に、ピッカピカの皮のブーツ。赤く濡れたショートヘアの髪に、当時珍しい青いカラーコンタクトをはめた、色白の見るからに怪しい雰囲気を醸し出す日本人女性。

 英語の発音は日本人離れしており、ここからもかなり訓練された女性と推察される。

 (ただ者じゃねぇ!)

 なんでも、前の学校で、一目惚れした男子生徒がいたらしく、

 「食事行かない?」

 と、熱烈に誘うのだが、この男子生徒も(この女、ただ者じゃない!) と思ったらしく、固辞していたという。

 しばらくして、誘いがなくなったので、(諦めたみたいだ) と安心する男子生徒。

 ある日、男子生徒が住んでた家に用事があって電話すると、電話に出たのが、この女性将校。驚きと怒りと恐怖で、

 「お前、そこで何してるんだ!? 不法侵入じゃないか! 警察を呼ぶぞ!!」

 と、その男子生徒が叫ぶ。すると、その女性将校は、落ち着き払った様子でこう答えたという。

 「ま、そんなこと、どうでもいいじゃない。それより、食事行かない?」


 たくいたは、ふと思った。

 (クイック&デッドな男・デビちゃんには、この女性しかない!) と。

 西部の荒くれ男には、やっぱり凄腕女性将校やろ~、普通。


 ある日の夕食。

 「デビちゃん、あの軍服の女の子、どう思う?」

 と切り出した。

 「え? あの娘、ちょっと変わってるよね」

 (ちょっとか? かなりやろ)

 と思いつつも、「うん、もしよければ紹介しようか?」

 「え? いいの?」

 ということで、引き合わせることにした。

 翌朝、学校に行くと、既にデビちゃんは登校していて、学校入り口近くにあるPCの前で、女性将校と談笑しながら、”英単語の教え合いっこ” をしてはりました。

 (ええ雰囲気やん~♪)

 意外な展開に、少し驚く。たくいたの”恋のセンタリング”が素晴らしかったのでしょう。その日の夕食のとき、

 「たくちゃん、あの女性将校、結構、『変な娘だ』って言われてるじゃない? でも、話してみると、意外といい娘だよね。俺は、周りの評判なんて、あんまり気にしないね。自分の感じたその感性を信じるよ」

 と語る。

 『周りの評判より、自分の感じたその感性を信じる』なんて、名言や。カッコよすぎる!

 意外な展開に、ちょっと(ええことしたんちゃうん? 俺) な気分になる。


 それから数日後、

 「たくちゃん、俺、思うだけど」

 「どうしたんだい?」

 「あの女性将校、ひょっとしたら、危ない娘じゃない?」

 「うん、危ないかも」

 「だよね! 危ないよね! たくちゃん、あの娘、危ないって知ってた?」

 「知ってた」

 「そうか~。知ってたんだ。あはははは」

 「知っててん。あはははは」

 「ひどいな~。あははははは」

 「ごめんごめん。あはははは」

 妙に納得した様子のデビちゃん。そして、このマッチングは、解消したらしい。気付くの遅っ!


 その日、昼ごはんを食べ終え、学校に戻る途中。

 「たくいた~! たくいた~!」

 何処からか、自分の名を呼ぶ声が聞こえる。辺りを見渡すも知ってる人間は誰もいない。

 「たくいた~!」

 ふと走る過ぎようとするバスを見ると、窓から、軍服と青く光る目が見える。

 「おおっ!」

 気付いて、手を振ると、

 「これからお茶しない~!」いう声がする。

 「授業があるから、すまぬ!」と叫んだのだが、

 バスは、「お茶しない~」という声と共に、ダウンタウンの方向へ走り去っていった。

 ”恋のカウンター攻撃” ができそうな展開ですが、普通に、やっぱりしないよね。

 この日から、たくいたが標的になってしまい、青い瞳に怯えながら暮らしたとさ、と、このように語り伝えられているという。



 
                   おしまい



 
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